2008年6月20日金曜日

Web戦略とデザイン不在が招いた厚生労働省Webサイト混乱の必然

遅く帰って、夕刊を開いたら驚いた。日経3面に「”偽サイト”最上位に」という大見出しで、グーグル「厚労省」検索が乗っ取られ、「原因を調査中」というのだ。記事では真相が分からないのでニュースを検索すると状況が見えてきた。ITメディアの記事によると、

12月26日午後7時時点で、両キーワードで検索すると、「xuite.net」という厚労省とは無関係なドメインのURLが検索結果の最上位に表示される。同サイトは台湾の翻訳サービスとみられる。

という。ITmedhiaの記事にはニュースになった時点の結果が残っていて、私が確認した12/27の午前零時過ぎには、Wikipediaの記事が1位という全く違う結果になっていた。


■1位で表示されていたサイトの正体:台湾のWeb翻訳ツールっぽい(私見)


Kouroushotw_21位表示されていたサイトの正体は、翻訳サービスを通して表示したページのようだ。アクセスして画面をキャプチャしてみたのだが、正規のページの情報をリアルタイムに読み込んで、プルダウン方式の広告を出す仕組みで閲覧させている。jp2jp で始まるドメインが、日本語ページを日本語に翻訳(スルー)しているという意味かもしれない。


問い合わせが来て大事になったのだと思うのだが、専門家が調べればこのページの正体が分かりうるし、あわてて大騒ぎしていたずらに不安を煽るようなことは過剰反応だろう。



■Web戦略とデザイン不在が招いた自業自得の大混乱
どうやったら、この台湾のツールを通したサイトが1位になれたのか?大いに不思議だが、12/27午前零時時点の検索結果からある程度類推がつく。公式サイトのドメインやURLが乱立して、本物の公式「ホームページ」がどれなのか見分けが付きにくい混乱が続いているのだ。検索結果の状況を末尾にコピーしたが、上位28の検索結果中、なんと21URLが公式サイトおよびそのサブドメインになっている。www. で始まるのがWebという慣わしのほかに、bbs.とか実は任意の文字列でhppp のWebサーバーを立てられるのだが、これがごちゃごちゃといっぱい立っていてどれが本家か分からない状態になっているのだ。

※ご注意下さい

厚生労働省ホームページの正規のアドレスは、

http://www.mhlw.go.jp/ です。

という注意は、実体に即していない。この注意だと、例えば、「wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/ は偽サイトなのか?」とい余計な混乱までまねきかねない。





本来どうすべきかは、対策で書かれたように、wwwで始まり、 / (スラッシュ)で終わるページを正規のホームページとして集約させるべきだ。実際、ほとんどの企業やサービスサイトがそうして、混乱を防いでいる。大規模な例外がYahoo!と2chなのだが、www-secure.のようなオレオレ詐欺風のサブドメインは使っていない。用途ごとやジャンルごとに分けた意味を持たせたサブドメインを適宜使っている。また、サイトの親子関係が分かるようデザインし、必要性があって作った別のサブドメインのサイトもサブサイトとして統一感を持たせ、下の階層ページと似た位置づけとしている。2chのように巨大な負荷を低コストでさばかねばならないサイトではサブドメインを分けたサーバーをいっぱい立てるのは合理的だが、ここだとsports3 .2ch.net とかいうように読み取りやすく識別しやすい文字に留めている。



ASP/SaaS企業だと企業サイトとサービスサイトを分けるところが多いが、その場合もサービスと運営主体の主従関係を整理してみせる必要がある。前の勤め先のデジタルフォレストは、商品サイトとしてのVisionalistと以前は完全に分離していた。運営主体が分かるように工夫して、その結びつきを分かりやすく最近整理しているが、こういう微妙なデザインが必要なのだ。ハローワークのサイトとか、競争の激しい人材サイトの一つとして運営しているという気構え、予算、体制とかがあるようには見えない。



また、細かなことだが、厚生労働省のサイトはトップへのリンクが www.mhlw.go.jp/ とは限らず www.mhlw.go.jp/index.html にもリンクしてURLが分散している。ここは / に統一して、おくべきだ。SEOの基本的なコツの一つだ。ファイルサーバーでリンク確認しているとか作り手の都合が見え透いているのは残念だ。

■SEOは、Web戦略担当者の必須項目
いずれにしろ、今回の騒動は、SEOへの注目を集めまた、Web戦略担当者が気にすべき必須項目として認知が広がるきっかけになるだろう。世の中これに似た例は他にも何度か見ている。
心当たりがある人は自分のサイトがずばり出てくるか、急ぎ見直しておいたほうがいいだろう。

2007/12/27 零時ごろのGoogle検索結果より
1 厚生労働省 - Wikipedia

ja.wikipedia.org/wiki/厚生労働省 - 68k
2 Category:厚生労働省 - Wikipedia

ja.wikipedia.org/wiki/Category:厚生労働省 - 44k
3 厚生労働省ホームページ検索 - 0:06

kensaku.mhlw.go.jp/ - 12k 1
4 厚生労働省:メール受付

https://www-secure.mhlw.go.jp/getmail/getmail.html - 6k 2
5 厚生労働省統計表データベース - 0:08

wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/ - 6k 3
6 統計調査別公表データ

wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/kouhyo/indexk-roudou.html - 26k 4
7 厚生労働省

www.mhlw.go.jp/ - 関連ページ - メモをとる 5
8 重症急性呼吸器症候群(SARS)関連情報

www.mhlw.go.jp/topics/2003/03/tp0318-1.html - 2k 6
9 厚生労働省 電子申請・届出システム

hanyous.mhlw.go.jp/shinsei/crn/html/CRNMenuFrame.html - 1k 7
10 厚生労働省 電子申請・届出システム
hanyous.mhlw.go.jp/shinsei/crn/html/CRNHajimete.html - 21k 8
11 厚生労働省 電子入札システム
www.ebid.mhlw.go.jp/ - 10k 9
12 厚生労働省 電子入札システム
www.ebid.mhlw.go.jp/info/ - 2k 10
13 法令等データベースシステム
wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/ - 7k 11
14 法令等データベースシステム
wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/html/hourei/contents.html - 1k 12
15 厚生労働省

mobile.mhlw.go.jp/ - 2k 13
16 厚生労働省:ハローワーク

mobile.mhlw.go.jp/hellowork/index.html - 2k 14
17 各種助成金、奨励金の制度

www2.mhlw.go.jp/topics/seido/etc/antei/index.htm - 3k 15
18 教育訓練給付の支給申請手続について

www2.mhlw.go.jp/topics/seido/anteikyoku/kyouiku/index.htm - 17k 16
19 厚生労働省:厚生労働統計一覧

www-bm.mhlw.go.jp/toukei/itiran/index.html - 16k 17
20 厚生労働省:一般職業紹介状況(平成192月分)について

www-bm.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/ippan/2007/02/index.html - 8k 18
21 厚生労働省:イザ!

www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E5%258E%259A%25E7%2594%259F%25E5%258A%25B4%25E5%2583%258D%25E7%259C%2581/ - 56k
22 厚生労働省とは - はてなダイアリー

d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%FC%C0%B8%CF%AB%C6%AF%BE%CA - 37k
23 FORTH(FOR Traveler's Health) - 厚生労働省検疫所 海外感染症情報 - 0:07

www.forth.go.jp/ - 15k
24 動物由来感染症を知っていますか?

www.forth.go.jp/mhlw/animal/ - 10k
25 ようこそ厚生労働省図書館へ

library.mhlw.go.jp/ - 7k 19
26 情報館WebOPACトップページ

library.mhlw.go.jp/jhkweb_JPN/ - 5k 20
27 ハローワークインターネットサービス

www.hellowork.go.jp/ - 32k
28 白書等データベースシステム

wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wp/ - 1k