2008年6月22日日曜日

ブロックブログ閉鎖に寄せて(全文)

2003年からサービス開始の老舗のBlogサービスブロックブログおよびグループ運営 できるホスティングサービスのブロックグループが短い告知期 間で閉鎖されることが一部で話題になっています。運営元の株式会社キュルイ竹内克仁氏とは 旧応用通信電業(OTD)時代に、取引させていただいた、とか元社員の方とつながりがあったとかいう縁で気にかけていたので、私なりの考察を述べてみま す。なお、せっかくの記事なので多くの方に読んでもらえるように冒頭はCNET Japanに書きますが、より込み入ったことは責任がより明確な実名運営の私のブログに書かせていただきます。

事実関係の整理:突然の閉鎖の告知状況

ブロックブログ閉鎖問題、ここまでの動きまとめ。では、

◆しかし、「サービス終了発表から10日後に全て消滅」という、夜逃げ同然の有り得ない閉鎖形態であった上に、ユーザーへのサービス告知メール等も無かった為に、ユーザー間に動揺が広がる。

とされてますが、私は、6/18付けで以下のメール

6月13日にトップページで告知いたしました通り、残念ながら、
このたび2008年6月26日(木)をもって、ブロックグループ/ブロックブログを閉鎖させていただくこととなりました。

を運営元から受け取っているので、「告知メール等も無い」わけでないことを補足させてもらいます。

た だ、メールを受け取ったらもう閉鎖まで10日無いという状況なので困るのは確かでしょう。キュルイの前進応用通信電業はOTD掲示板を事業譲渡し、今は Livedoor傘下のサービスとして続いているだけに、こういったユーザーサービスの重みを知り、うまい終わらせ方の経験をしているはずなのにという想 いが残ります。まして、プリペイドの有償サービスとしてやっていたですから。

事情を推察するに、有償サービスもあったからこそ、終わりが破綻と同時となってしまうということなのかもしれません。閉鎖に伴い返金対応せざるを得ない以上、それが即、債務不履行につながる行為として致命的なことだったのではないかと推察します。

無料レンタル掲示板で一定の存在感を持った応用通信電業/ルーズフィット/キュルイの歴史を振り返る

手元の資料によると、応用通信電業は当時大学院生の竹内氏と、長らく社長だった井上氏の二人で1998年7月に事業を開始、1999年4月に有限会社化、 OTD BBS サービスを1999年8月19日に開始ということで立ち上がった会社です。学生企業からネットバブル崩壊の荒波を越え、10年近い歴史を刻んできたことは 大いに賞賛に値します。そして、OTD BBSは無料レンタル掲示板サービスとしては、Teacupに次ぐ2位のシェアをもち、それなりに存在感があったのです。

その後、OTD BBSの広告価値拡大に苦戦するも、無料ISPだった旧Livedoorに掲示板システムを提供するなどして成長しましたが、委託業務の終了などで、苦境に陥り、2003年7月に女性向けコミュニティサイト「LIN(凛)」などを運営する株式会社アルチェにOTD BBSを営業譲渡します。(ちなみに、そのアルチェは現Livedoorに買収され、OTD BBSは今もサービスとしては健在です。)

OTD BBSを事業譲渡した応用通信電業は2003年にBLOCKBLOG(以下ブロックブログ)サービスを開始します。無料レンタル掲示板を事業としてきた会 社が、今度はブログに転換というのはスムーズなストーリーですが、 ひとつ違う点がありました。ブロックブログは有償が基本だったのです。しかし、ブログの存在がより重要となり大手が無料で次々と参入するという中、 2004年3月無料に転換しました。

そのころから、サービス存続への疑問はあったようです。サービスへの不満やデータ移行の問題に対して社長の竹内氏は自身のブログ http://web.archive.org/web/20050920093100/http://dream.bblog.jp/entry/33788/ で2004/07/26に「運営のスタイル[BLOCKBLOG]」という題でこう回答されています。


ただし、ある日突然サービスが消えてしまうということはありません。
絶対にありません。

なぜないかというと、私がそれをしないからです。

私にそのつもりがなくても、儲かってなかったらダメだろうといわれそうですが、そんなに金がかからないように作ってあるので、資金ショートである日突然なくなるようなことにはなりません。

もし万が一、わが社で運営しきれないようなことになったら、運営することができるところに譲渡します。

それもできないような最悪の事態のときは、閉じる前に告知を行い、データのダウンロードをできるような体勢を整えて、データを皆さんの手元にお返しすることだけは、確保したいと思っています。

それすらもできなかったら、データをRに焼いて、私のメールアドレスを公開し、手動ででもデータの回収要求にお応えします。

以上のようなことは想像したくはないですが、サービスを行ううえでの覚悟だと思っています。

「みんなバスに乗り遅れまいとして、採算を度外視してblogをやっているように見えるが、大丈夫なのか? そんなバブルは近いうちにはじけるのではないか」
という危惧は、皆さんお持ちであろうと思います。
その危惧は、あたっているのも事実です。

しかし、私も含めてですが、blogをやっているところで、これからの発展をblogだけで考えているところはないのではないでしょうか。
blogはもっと大きな変化の緒戦にすぎないと思っています。
もっと大きな変化というのは、XMLの普及であり、閲覧環境の非ブラウザ化であったりします。
この記事は、本来のURLではもう見れなくなっていますが、Archive.org には残っていました。

デー タを(CD)Rに焼いてでもと言いつつ、XMLの普及と非ブラウザ化に話が飛ぶあたり、理想と現実のはざ間に立つ社長の苦悩が垣間見れます。データのエク スポート機能なんて最初からあって当たり前なはずなのに、それが今無いというジレンマなのでしょうか?(ちなみに、ブロックブログのデータ移行は記事掲載 数を最大数表示、日付時間表示を変更、Movable Type方式に変換とかの流れで可能なそうです。ただし、手順を見るにかなり高度な技が要求されます。)

ともかく、この投稿からはいろいろなことが窺えます。ブロックブログは儲かってないようではあるがそれほどコストもかからないので、事業の突然死は予期していないということです。とはいっても儲かる種が無い会社は存続ができません。

ルー ズフィットという新たな社名で2007年7月にBLOCKGROUP(ブロックグ ループ)というグループ編集機能とSubversionを用いたファイルの世代管理機能を持つ有償ホスティングサービスを開始します。ファイルの世代管理 は私も開発者時代に使っていたので期待しました。使いやすければ多少高くても使おうかなという気になって調べたら250円と安かったのです。しかし、結局 私は利用するまで至りませんでした。

ニーズ不在だった、大きな賭け:ブロックグループ

結局、Subversionはタフすぎて、使いこなせる気がしませんでした。自分ひとりでは使いこなせるかもですが、グループで使っていくことを考えると、この概念をみんなで理解して使いこなすのはほとんど無理という結論がすぐに出てしまいました。Backlogという使いやすいツールを使っていても、大勢で使うにはいろいろな問題を経験しました。使いたくない理由をいろいろ見つけてくる人がいるのがこういうツールの常です。そこからすると、ブロックグループは概念の理解というところで躓くと確信がもてたのです。

便 利で役立つ機能なので、世の中にはこれを必要とする人も居るとは思います。しかし、月250円という大衆価格で採算がとれるほど集まるとは思えま せん。例えば、月額10万円とか、もしくはそもそも、開発費用を持つから作ってくれと頼まれたら、カスタムサービスとしてウン百万円かけて作ってあげるぐ らいのサービスだったのではないかと私には思えます。

竹内氏へのエール
今回、ブロックブログ/ブロックグループは残念なサービス終了という形になりました。後始末には大変なご苦労があるでしょうが、是非なんらかの形で立ち直ってほしいと期待しています。そして、10年間の取り組みでOTD BBSというサービスを残して世に役立っているということは誇りとして大切にして次の仕事に役立てられることを祈念いたします。